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タリアセン・ウェスト GAトラベラー<001>
![]() | author: フランク・ロイド・ライト 二川 幸夫 ブルース・ブルックス・ファイファー 玉井 一匡 asin: 4871406113 binding: ハードカバー list price: ¥ 2,940 JPY amazon price: ¥ 2,940 JPY |
本書は、アメリカの建築文化において輝かしい歴史を刻んだ建築家、フランク・ロイド・ライトの代表作の1つである「タリアセン」を紹介する作品集である。二川幸夫のレンズが捉えた緑豊かな地に広がる建築が、ページをめくるごとに豊かな詩情をもって展開する。 1867年に生まれたライトは、シカゴにある、最初の作品となった自邸兼スタジオに20年ほど住んだ後、施主の夫人とともにヨーロッパへ逃避行をする。帰国後、帰る場所をなくしたライトは当時、彼の母が住んでいた長閑な風景が広がる農村へ移り、そこに自邸、さらに弟子たちも共同生活する「タリアセン」を建てる。しかし、召し使いの放火で建物は焼失し、夫人や子どもたちも巻き添えで亡くしてしまった。さらに建て替えたものさえも再び火災の魔の手に。現在残るものは、2度目の改築による「タリアセンIII」である。 本文はライト自身の言葉を多く引用したテキストで始まる。少年時代のおおらかな時を過ごした、輝く緑の丘。その地に再び帰り、自然の中で建築をつくりあげていく、みずみずしい感動が詩となる。ページをめくるとその自然の光景がまさに鮮やかな写真となり目を潤す。見開きごとにテキスト、写真が繰り返され、いつしか想像力は緑の大地を泳ぐ。やがてテキストだけとなるのだが、それは「火をやっつけろ!」と闘うくだりであり、この建物の、いやライト自身の苦難を知る。 そして「タリアセンIII」がカラーページを交え、堂々としたボリュームで展開する。それはそんな不幸な経緯があったことなど思いもしない、平和で温かな空気を感じさせる。ライトが設計した家具や照明器具、収集した日本や中国の美術品、そして深い緑と草原の光が、建築空間を彩っているさまをレンズは精緻に捉えている。 書棚に20年、30年と置いても古びない価値を感じさせる1冊である。(中谷俊治)
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